げーむの跡

襟足の行方

8月をくれて11月

ああ、一番欲しいのだけ

とれてない気がする...

 

 

 

そんなことを思いながら地面に帰ってきて、しばらく。

少し前になんだかんだやり取りのあったお隣の、親子かなくらいの年の離れた二人組の奥のおひとりが

「あの、これさっきのお礼に、よかったら。」

と一番手に入れたかった色のテープを一本目の前に。

欲しい色が気づかれていたことと唐突の好意に驚きと戸惑いつつ、

「えっそんな、いいんですか。それじゃあ...よければ。」

と、さっき地面に持って帰った銀テ束を全て差し出す。

それは逆にいいんですか?と二人揃って恐縮されながら、嗚呼これでコンプだ目的色が一本ずつ手に入ったとホクホクにしまってもらえた。

 

 

すぐお隣の方の女性が「ていうか凄くないですか。一回軽くしか飛んでもないし。わたし見てたけど横目で。そのヒールで、一回だけで。」と奥の方にも説明するように交互に見ながら少し興奮されている。手にいれた唯一のテープを差し出してくださった奥の方も一回でこの束って本当に?と半分信じていないご様子。手前のお嬢さんがなにかコツとかあるんですか?とちょっとマジトーンで聞いてきて、いくら場転中といえメインステージの真逆のこっちをじっと見ておられるので、早口でお答えする。

 

あーとですね、一番最初に届きそうに降ってくるのはみんな取ろうと構えてますよね、なんなら一番のどの色とろうだのめぼしまでつけて。そんな競争率が高くて取っても前後左右でひっぱって仕舞いあいっこで牽制する時間かかるやつに手を出してると、本当に欲しい色だの後から降ってくるやつだのに手が出せなくなるから、ご近所みて、ちょっとタイミングずらしてとればいいんです。あとはみんなで分けあえば仲良し。

 

これがわたくしめの、そんなに数として多くはないアリーナでの落下物収集経験則です。長文にも漢字八文字にするまでもないオタクの浅知恵袋ですが、前方のギャルと軽く牽制しあっていたお嬢さんには響いたようで、そっかーそれでかあいいこと聞いたぁ次降ってきた時やってみます!と元気な返事を頂いた。元気で未来があってまぶしい。終演後も少しお話して、なんとなく本命ですかてか本命とかいますかーって話になり、嗚呼なんか知り合いはほとんど寒いとこで海鮮食ってますねー今と答えるとお察しいただけて。いいんですかこっち来ちゃっても、と心配もそらしてもらえたんですが。黄金期を移り行く様を、それでも続いていく様を、最後の一人でもと言い切ったその人をキチンと観ておきたかったんです。とは言いませんでしたが、テープ全部渡しても構わないくらい欲しい色はありましたよ。続くことも移ろうこともタイミングをみることもみないことも、全部正しい。なんでそれ選んだかだけを自分が忘れないならいい。やっと夏が終わりました。

 

 

あとは、5人の方の福岡で今年も終わります。生きる。